Geminiを使って心理学論文を効率よく読み解く。概要をまとめてもらう、分析方法を解説してもらう、など
Googleが大学生限定でGeminiの無料アップグレードをはじめたのに乗っかっている。なにせ大学生だから。
せっかくなのでGeminiのうまい使い方を模索していて、最近は放送大学の卒業研究のために調査している論文を、より深く読み込むために使ってみている。
Geminiに論文の概要をまとめてもらう
まずは、読もうと思っている論文をアップロードして、
「この論文の概要を教えて」
とか入力すれば、だいたいそんな内容なのね、と思える文面を返してくれる。

Geminiのすごいところは、英語論文でも同じ手順で概要を示してくれることだ。
おかげで英語論文でも、とりあえずアップして、概要を教えてもらえば、おおよそのことは掴める。
概要はアブストラクトでも大体掴めるようになっているハズなんだけど、Geminiにまとめてもらった方がわかりやすいことも多いと思う。
そうしてGeminiに概要を教えてもらった上で、論文を読んでいくと、効率がよい気がする。
Geminiに分析方法ついて解説してもらう
論文を読んだあとに、気になったことをGeminiに質問すると、結構いい感じの回答がもらえる気がする。
例えば、心理学研究では統計学を使ったデータ分析を試みる研究が多いんだけど、論文を読んでいる中で、
- その分析方法で何がわかるの?
- どういう手続きで分析するの?
- この論文でやっている手続きは一般的なやり方なの?
- どうしてその分析方法でその結論になるの?
といった疑問が湧いたとする。
その場合は、そういった疑問をGeminiにぶつけてみるのだ。
Geminiにアップロードした論文は、そのファイル名を指定すれば参照してくれる。私はファイル名をZoteroの機能を使って、論文のメタ情報でリネームしていて、「堀江 et al. – 2007 – 研究開発組織における知識提供と内発的モチベーション.pdf」のような名前を付けている。この場合、Geminiには「堀江 et al. (2007) において」のように書いてやれば、そのファイルの内容を参照した上で回答してくれる。
これを使って、
「堀江 et al. (2007) の論文で、因子分析の後に標準得点化をしているが、これはどういう操作をしているのか?なぜ標準得点化をするのか?」
のような質問をしてみると、一般的な回答 (標準得点化とは何か?どんな手続?に対する回答)と、論文中でこの操作を採用した目的を推測して回答してくれる。あくまで推測なんだけど、もっともらしいことを言ってくれていると思う。
これらのGeminiの回答を参考にしつつ、論文を読み返してみると、分析方法に対する理解が深まる。
生成AIの言うことだから、どこまで当てにしてよいかはもちろん気にするべきだが、統計的な分析方法みたいな手順がハッキリしているものに関しては、かなり正確に掴んでくれていると思う。少なくとも私よりは詳しいだろう。
まずはこの内容を踏まえ、本当にそうか?と思って調べてみるのも勉強になる。
Geminiに一般的なことを聞く
知らない分析方法が出てきたら、その内容を聞くのもいいだろう。
「共分散構造分析をすると何がわかるの?」
「共分散構造分析をする場合の注意事項にはどのようなものがありますか?」
「共分散構造分析をする場合、データは何件くらいあると適切?」
のような、論文中のその分析方法の使い方、ではなく、一般的にどんなものなのか、を聞くのだ。
こうすることで、分析方法の理解が更に深まる。
Geminiに論文中の必要なところだけピックアップしてもらう
先の論文を指定するやり方を使って、論文中の必要なところだけピックアップしてもらうのも便利だ。
例えば、
「江口と戸梶 (2009) の論文における、労働価値観測定尺度短縮版の全項目と測定方法を教えて」
といった具合に。
こうすることで、心理尺度の部分だけ抜き出して表示してくれる。
心理学論文では、調査に使った質問項目を列挙している論文は多いのだが、割と本文中にバラバラと書かれていたりする。あるいは、測定方法が5件法のところと6件法のところがあるとか、合計が大事なのか平均が大事なのかとか、そういった測定に関する細かいことは本文中に散りばめられていたりするから、Geminiにまとめてもらうのだ。
Geminiはソースファイルとページ数くらいは合わせて教えてくれるから、それを手がかりに元の論文にあたると情報を収集しやすい。本当にそうか?という確認にもなるし。
応用としては、その論文で他の文献から質問項目を引用している場合は、引用元の文献を列挙してもらうこともできる。
「Ikeda et al. (2023)の論文では、ワークエンゲージメントやモチベーションなどに関する測定をどの心理尺度で行っていますか」
のように。
こうすることで、この測定はこの心理尺度、この測定はこの心理尺度、といった具合に引用元をまとめてくれる。まとめてくれた引用元には個別に当たる必要はあるが、まとめてくれるのが意外と助かる。
Geminiに英語論文の読解をサポートしてもらう
上記のようなやり方は、英語論文でも使える。
Geminiへの質問は日本語でOKだし、回答も日本語で出してくれる。
いきなり英語論文を読み進めるのは辛いけど、Geminiに噛み砕いて概要を教えてもらった上で読み始めたら、ちょっとは心理的負担が下がる。気がする。
要点を押さえておけば、特定のセクションだけ読めばだいたい掴める気がするし。いきなり体当たりするよりマシだと思っている。
おわりに
Geminiにサポートしてもらいながら、論文を深読みしていく方法を具体的に書き出してみた。
論文をアップロードしたら、Geminiにその論文を読み込んだ人だと思って質問してみると、かなりそれっぽい回答をくれるので、大いに助かっている。
もちろん、自分でも論文を読むんだけど、解釈が合ってるのかわからないときとか、一般的にその手続きであっているのか疑問に思ったときとかに、相談に乗ってもらうような感じでGeminiに聞くと、丁寧に回答してくれる印象だ。
生成AIの言うことだから、どこまで当てにしていいかは常に意識しておく必要があるけど、回答をもらったら「本当にそうか?」と思って論文に当たることで更に理解が深まる感じがするし、経験的にはそこまで外れた回答にはなってないと思う。
こんなふうにして、私にとってはGeminiを介して論文に対する疑問をぶつけることが、論文を深読みしていく手がかりになっている。これはいいものだ。
引き続き、Geminiを活用しながら、効率よく論文を読んでいくとしよう。